2017年3月12日日曜日

精神分析とは何か ①

このセミナーのテーマは、精神分析とは一体何か、ということですが、精神分析家、という仕事があり、精神分析オフィスを開いていて、そこに患者さんがやってきて、一日分析をして、それを主たる収入とする人たちがいるというわけではありません。それで食べていける人たちはごくわずかでしょう。アメリカでも精神分析だけで食べていける人はごくわずかでしょうし、日本では聞いたことがありません。大体どんなに有名な分析の先生でもたいていはそれ以外の精神療法をしたり、精神科の外来をやったり、大学の先生をしたりして、そこでの収入があって生活をしています。ただし分析家たちの中には、そのように分析一本で生活していくことを理想としている人たちは沢山います。精神分析家たちはおおむね非常に高い理想を持ち、忍耐強い人種です。彼ら自身が週4回以上、おそらく3年以上の分析を受け続けて分析家の資格を取った以上、そのような人たちが忍耐強く、また分析の掲げる理想を追い求める傾向があるのは、必然なのです。
さてこの写真はその創設者シグムントフロイトの一番脂がのりきった時期の、おそらく60歳代の頃の写真ではないでしょうか?
 フロイトは1800年代の半ばに生まれました。大体どのくらい昔の人かといえば、例えばこうやって話をしている私は60歳ですが、私はフロイトが生まれた時からちょうど100年後が誕生日です。その意味ではずいぶん昔の人です。そしてその人が作り上げた理論がいまだに大きな力を持っているのは実に不思議なことです。フロイトが提唱した精神分析理論をうんと短く言えば、次のようなことです。「人は意識することが苦痛であるような欲望を無意識に抑圧することがあり、それが形を変え神経症の症状などの形で表出される。そのため、無意識領域に抑圧された葛藤を表面化させて、本人が意識することによって、症状が解消しうる。」これは私たち分析家から見たらまさにそれ以外に言いようのない、精神分析の定義ですが、一般の方には分かりにくいかもしれません。