2015年6月24日水曜日

自己愛(ナル)な人(12/100)

 今日の文も、かなり自己剽窃が見られるな。まあ訴えられることはないだろう。

 そこで以下にサイコパスという表現に絞って論じよう。サイコパスの最大の特徴は冷酷さであると考えられる。より年少から罪を犯し、より重層的な犯罪行為にかかわり、行動プログラムに反応をしないという。彼らは痛みによる処罰などにも反応せず、平然としているために行動療法的なアプローチがそもそも極めて難しいという問題がある。
  サイコパスに興味を持つ人にとって必読の書がある。それがロバート・ヘアという心理学博士の「診断名サイコパス身近にひそむ異常人格者たち」という本でわが国でも翻訳が出ている。(「診断名サイコパス身近にひそむ異常人格者たち」 (ハヤカワ文庫NF) ロバート・D. ヘア Robert D. Hare 早川書房 2000-08)ヘアはこの世界の大家で、彼の著作はサイコパスという概念が一般に知られることに大きな貢献をしたが、若干それが行き過ぎだったという批判もあるという。それは、サイコパスが私たちの生活で出会う人の中に数多く存在するという印象を与えすぎたというわけだ。
彼はあるインタビューで答えている。http://healthland.time.com/2011/06/03/mind-reading-when-you-go-hunting-for-psychopaths-they-turn-up-everywhere/ それによれば、サイコパスは一般人の100人に一人だが、ビジネスリーダーたちに限ってみると、四倍に跳ね上がるという。確かに彼らは有能であればあるほど、一定の能力にたけていることになるのかもしれない。それは利益を追求し、必要とあれば一気に何千人もの従業員を解雇して路頭に迷わせることが出来る能力である。事実サイコパステストには、ビジネスに関しては「正解」なものも多いという。いわば資本主義ではサイコパス的にふるまえばふるまうほど利益があげられるということらしい。これについてはたとえば日本でのオレオレ詐欺の現状を考えてみよう。あれほど巧妙にやればやるほどもうかる商売はないと言える。
これについては、最近興味深いニュースが伝えられたことをご存知の方もいるかもしれない。
「勝ち組」はジコチュー? 米研究者ら実験で確認
お金持ちで高学歴、社会的地位も高い「勝ち組」ほど、ルールを守らず反倫理的な振る舞いをする――。米国とカナダの研究チームが、延べ約1千人を対象にした7種類の実験と調査から、こう結論づけた。28日の米科学アカデミー紀要に発表する。
 実験は心理学などの専門家らが行った。まず「ゲーム」と偽って、サイコロの目に応じて賞金を出す心理学的な実験をした。この結果、社会的な階層が高い人ほど、自分に有利になるよう実際より高い点数を申告する割合が多かった。ほかに、企業の採用面接官の役割を演じてもらう実験で、企業側に不利な条件を隠し通せる人の割合も、社会的階層が高い人ほど統計的に有意に多かった。別の実験では、休憩時に「子供用に用意された」キャンディーをたくさんポケットに入れる人の割合も同じ結果が出た。 (朝日新聞デジタル、2012228)http://www.asahi.com/science/update/0228/TKY201202270655.html
もちろんこれらのキャンディー好きがサイコパスだとは言えないだろう。しかしおそらく「プチ・サイコパス」と考えてもいいのかもしれない。物事には程度がある。サイコパスにも「ちょいワル」程度から連続殺人犯までのスペクトラムがあるはずだ。その中でかなりの部分が、社会的な成功者の中に見られてもおかしくない。