2015年2月24日火曜日

第8章の一部を書き換えた


他の特定される解離性障害(以下、OSDDと略記しよう)には、1 混合性解離症の慢性および反復性症候群、2 長期および集中的な威圧的説得による同一性の混乱、3 ストレスの強い出来事に対する急性解離反応 4 解離性トランスの4つが属する。
 そのうち4の解離性トランスについては次のように記載されている。「この状態は直接接している環境に対する認識の急性の狭窄化または完全な欠損によつて特徴づけられ,環境刺激への著明な無反応性または無感覚として現れる。無反応性には、軽微な常同的行動(:指運動)を伴うことがあるが、一過性の麻痺または意識消失と同様に,これにその人は気づかず、および/または制御することもできない。解離性トランスは広く受け入れられている集団的文化習慣または宗教的慣習の正常な一部分ではない。」と説明されている。
(5)特定不能の解離症/解離性障害 unspeficied dissosiative disorder
 文字通り、以上のどれにも分類することが出来ない解離性障害ということになる。これについては何ら「例」は示されていない。
ちなみにこれまでのDSM1980年のDSM-IIIから2000年のDSM-IV-TRまで)に存在していたDDNOS(ほかに特定されない解離性障害)DSM-5では消えていることに当惑をしている臨床家も少なくないであろう。解離性障害では漠然と理解できるが、その具体的な確定診断には至らない際に、比較的頻繁に臨床家の間で用いられていたのがこのNOS診断だったからだ。そのNOSが消えて、そのかわりODSSUDD(ほかに分類されない解離性障害)が登場したわけである。この変更は、従来DDNOSがあまりに頻繁に使用されてきたことへの反省から生まれたことは容易に想像できる。確かに多くの解離性障害がいわば「ゴミ箱」的な存在(言葉は悪いが)であるNOSに含まれてしまうことは分類上問題であることも確かである。この「ゴミ箱満杯問題」は、DSM-5で解決するのであろうか。

ここでDDNOSに列挙されていたものを思い出そう。そこには「例」として、1DIDの不全型(明確に区別されるパーソナリティ状態が存在しない、重要な個人的情報に関する健忘が生じていない)、2.離人症を伴わない現実感喪失 3長期間にわたる強力で威圧的な説得、4.解離性トランス障害などが挙げられていた。このうち特に問題となっていた、1DIDの不全型については、上記のようにその禁断基準が緩められたことで、以前はここに入り込んでいたケースの多くがDIDとして診断を下される可能性があろう。また2についても、そこに該当していたケースが今回新たに創設された「離人・現実感喪失障害」に組み込まれる可能性がある。また形式上はDDNOSに相当するUDDについては、そこに特に「例」を示さないことで、あたかも分類不能なケースをあまり引き寄せないような配慮ともいえるであろう。これがDSM-5作成チームの望むような結果を生むかは、今後書く臨床家がDSM-5をどのように活用するかにかかってくるといえるだろう。