2015年1月22日木曜日

第11章追加分(3)

実はRossはもっとクリアーに、このDSSのことを言っている。それは1997年のDissociative Identity Disorder Diagnosis, Clinical Features, and Treatment of Multiple Personality second Edition, John Wiley & Sons, Inc, 1997.においてである。実はこの記述に私は深い印象を受けたという経緯がある。この本では、「おそらくDSSがあるであろう」という言い方をし、もっと直接的な解離性統合失調症dissociatve schizophrenia (以下、DS)という用語を用いている。「DSはおそらくシュナイダーの一級症状、ESP体験、奇妙な身体的妄想、ボーダーライン基準、小児期のトラウマにより特徴づけられる」とする。さらに「統合失調症の陽性症状は本来解離性の要素を持つであろう」「統合失調症の特徴は陰性症状であり、DIDの特徴は「後トラウマ性」post-traumatic featureであるとする。彼はさらに83人のDID患者を虐待群、非虐待群の二群に分け、前者ではシュナイダーの一級症状が6.3見られたのに対し、後者では3.3であったとする。
この書におけるRossの主張は非常にクリアーでわかりやすい。まずschizophrenia DIDは別物であり、前者は陰性症状で、後者はPTSD的なところである。(そのとおり!!)統合失調症の急性期の、陽性症状が盛んな時期は、ある意味で脳の一部の組織がウイルスや免疫システムの異常により「熱を持った feverish」(ロスはそう言っている。炎症を起こしている、というニュアンスだろう。)状態である。ところで統合失調症を病んでいる人にも、当然トラウマを被った人がいる。その人は解離症状をそれだけ多く示すだろう。
もちろんDIDと統合失調症が排他的である必要は必ずしもない。また統合失調症とトラウマの既往が排他的である根拠は全くない。つまりはDSSは、DIDと統合失調症の合併例である、ということになる。これはそれなりにわかりやすい。どうしてこの路線のまま進まなかったのだろう?