2015年1月21日水曜日

第11章追加分(2)

イスラム国の跋扈。日本人の人質の問題。結局サダム・フセインによる強権が及んでいた方がまだよかったのだろうか? 本当に歴史は分からないものだ。

さてロスの論文の559ページ。ここら辺から話が分からなくなっていく。ロスは、DSSには三つの重要な特徴があるという。それらは幼児期のトラウマ、解離症状、そして多くの合併症。そしてこれらを満たす人の多くは、PTSD,解離性障害、うつ病、BPD の基準をも満たすという。えー?どういうこと?それではDSSという単位を設けることの意味があるのだろうか?そしてDSM-5に向けたDSSの診断基準として、次の6つを提案する。1.解離性健忘、2.離人症、3.2つ以上の異なるアイデンティティか人格状態、4.幻聴、5.広い合併症、6.深刻な幼児期のトラウマ。えー、よくわからない。だってDIDの方々もこれらを満たすだろう。ということはこのクライテリアではDSSDIDを事実上区別できないのではないだろうか?ということでますます謎は深まる。読者をおいてロスはブロイラーの理論に移る。ブロイラーは言うまでもなく、1911年にschizophrenia の概念を打ち立てた人だ。ここの議論は分かりやすいが、明確に次のように述べているところが面白い。「ブロイラーのschizophrenia は、DSMDIDと同一のものである。」えー!
そのあと話は、一度統合失調症という診断が下った人の中にSCID-Dなどで高い指標が示される人がいて、DSSに該当するであろうということ。これはよくわかる。

ということでロスのDSSの概念は結局私にとっては意味不明のままである。どうしてこういう問題が起きるのか。私なりに説明したい。
統合失調症の特徴はなんといっても予後の悪さである。陰性症状が決め手なのだ。そしてもう一つ、現実検討能力の低さ。妄想や幻聴に惑わされてそれを現実に起きていることと区別できなくなる。幻聴の存在はある意味では統合失調症とDIDを分ける決め手にはならない。どんなに幻聴がひどくても、それが別の人格からのメッセージであることがわかり、あるいは自分の思考との混乱が生じてもそれが時間限定であり、また陰性症状がなければ、それはDIDに特徴なのだ。ところがロスのクライテリアにはその両方を区別する力がない。またDSM-IVも同罪である。なにしろ「②対話性の幻聴、ないしは振る舞いにコメントしてくる幻聴、の場合のどちらかなら一つでよい」のであれば、DIDの人の多くが統合失調症の診断基準を満たしてしまうからだ。

ということで、このままだとロスのDSSという概念、ねぞが深まるばかりである。業界ではある程度認知されているのだろうか?