2014年9月24日水曜日

治療者の自己開示 (9) 


そう、大事な分類を忘れていた。Aは実は「言語的」「非言語的」以上に対峙な分類が必要である。それは「患者から問われたうえでの自己開示か、問わず語りの自己開示なのかだ。こんな状況を思い浮かべよう。
「来週私は学会でフランクフルトに行きます。」
これを治療者がいきなり患者に伝えた場合と、「先生、来週セッションをキャンセルなさるのには理由があるのですか?」と患者に問われて答えた場合を比較しよう。前者を伝えられた患者は戸惑うに違いない。「どうして私が先生の来週の予定を聞かされなくてはならないのだろう。ヨーロッパに行くのがうれしいのかしら。」それに比べて後者は、そこまでこたえるかどうかは治療者により異なるとしても、精神分析以外ではごく自然な受け答えということになる。そう、自己開示は意図的に行われた際に、それが患者のリクエストによるものかどうかは、ある意味ではその性質を知る上で決定的となるだろう。
ということで分類の表の書き直し。


広義の自己開示 ・・・・ A積極的な自己開示 (1.問いに答えたもの、2.問わず語り)

B
消極的な自己開示(1.意識化されているもの、2.無意識的なもの)



もちろんこの分類はもう少し複雑になる。たとえば「フランクフルトに学会に行く」のうちフランクフルトは余計だったりする。実は治療者は初めてのヨーロッパ旅行で嬉しくて、自慢したかったのかもしれない。するとこれは実はA1+B1(自分でも自慢していることに気が付いた場合)、あるいはA+B2(自慢の部分に気が付いていない場合) のどちらかということになるだろう。