2014年7月31日木曜日

解離とTRP (推敲) 2

大阪府警の全65署が過去5年間の街頭犯罪などの認知件数約8万1千件を計上せず、過少報告していたことがわかった。府警が30日に発表した。街頭犯罪ワースト1の返上に取り組むなか、件数を不正に操作していた。2010年にワースト1を返上したと発表していたが、実態は違った。処分対象は97人にのぼった。刑事総務課によると、昨年、堺署など一部の警察署で過少報告が発覚。これを受けて全65署の担当者約460人から聞き取った。
というニュース。私は基本的には人間はいい加減だから、こんなことはよくあるのだと思う。それよりもこれを発表するところが、日本はそれだけ健全ということだろう。たいがいは一種の内部告発だろうが。

さて子供の人格に再固定化を促すべく、TRPを施すとは何を意味するのであろうか?
 ここでTRPについて少し復習しよう。私たちが学んだのは、トラウマ記憶がそこに流れている確信的な考えとともに、それとミスマッチな考えを隣接させることで、再固定化が起こるということだ。そしてさまざまな例を見たわけだが、そこで提示された症例はどれも、ある種の文章化しうるような思考内容を抽出し、それをインデックスカードに書いて宿題として何度も声に出して読んできてもらうという形式をとっていた。ある意味ではかなり認知療法的な手法ともいえる。
 しかし解離の場合にはおそらく通常の認知療法的な手法はあまり通用しないはずだ。インデックスカードを用いた宿題が意味を持つのは、それが一般して一つの人格により行われていることを前提としている。しかしDIDの場合には事情が異なる。ある人格Aが学んだ内容を人格BCは把握していない可能性があるのだ。そのためにたとえば人格Aに対して、あるいはBCに対して個別にこのTRPのプロセスを行っていくことになる。そしてその具体的な手順としては、おそらく考えを文章化する、という形ではなく、より体験的、実践的なセッションになるはずである。
 例えば以前紹介したケースBを思い出していただきたい。Bさんは20代後半の女性で、閉所恐怖症があり、車に乗っていて渋滞に巻き込まれると、胸のあたりがざわざわしてくる、というあのケースだ。Bさんの場合の治療者は、その状況を思い出してもらい、そこでイメージの中で新たな行動に出てもらうことでその記憶の再固定化につなげた。もちろんこの例で渋滞に巻き込まれたBさんは別人格ではない。しかしそれはトラウマの再現であり、それを体験しているBさんはいつもとは異なる心の在り方をしているはずだ。そしてこのような手法を、DIDにおいて傷つきを体験している別人格について応用することができるであろう。
 ここであるDIDの患者Bさんを考え、そのトラウマを負った子供の人格Bちゃんを考える。Bちゃんは幼少時に野犬に襲われて瀕死の重傷を負ったのである。するとその人格が出て反しているときにそれを想起してもらい、Bちゃんが「こうすればよかった」というイメージを浮かべ、さらには実行したつもりになってもらうという作業がもし可能であれば、それは再固定化につながる可能性がある。たとえばその犬に対して突然魔法の剣を取り出して斬り捨てる、ドラえもんに登場してもらい、撃退してもらうなど。

このようなプロセスの際、そのような作業を行うためにBちゃんを呼び出すか否か、という問題があるが、もちろんBちゃんが「眠った子」である場合に「起こす」必要はないであろう。その外傷記憶は再固定を待つまでもなく風化しかけている可能性があり、その場合に新たに呼び起こすことは治療的とは言えないからだ。