2014年6月23日月曜日

解離の治療論 (68)


DIDの脳の研究の論文はいつも読みにくく、理解がしにくいと感じてきたが、少し読みやすい論文があった。(Vedat SarSeher N. UnalErdinc Ozturk: Frontal and occipital Perfusion changes in dissociative identity disorder. Psychiatry Research: Neuroimaging Volume 156, Issue 3, 15 December 2007, Pages 217223)
ちなみにファーストオーサーのサー先生はトルコで解離の研究を精力的に続けている先生だ。トルコからの解離の優れた論文が多いのはそのためであろう。この研究は21人のDIDの患者さんと9人の健常者(いやな言葉だね)にPETという機械に入ってもらい、脳の活動の様子を見る。その間患者さんには特に指示は与えず、ただ主人格host personality でいてくださいね、と告げる。つまりその間に別の人格にならないでいてもらう。他方一般人はもともとほっておいてもホスト人格なのでそのままでいてもらう。そしてペットで注射を打った後60分後にスキャンする。いたってシンプル。こんなことで違いは出るのかと思うが、所見はしっかり見られたという。眼窩前頭前野で血流量の減少がみられたのだ。ちなみにこの研究は、サー先生の2001年の研究と一部一致したという。この研究では、眼窩前頭皮質の血流量の低下と、左半球外側側頭葉の血流量の増加がみられたという。そもそもForrest先生という人の、DIDの「眼窩前頭仮説」というのがあるらしい。私がこのブログでも紹介しているショア先生や、仮説を提出したForrest先生によれば、それは眼窩前頭皮質の、行動を時間的にかつ抑制的に構成する能力、情動の調整能力などが関係しているという。と書いていても、ここら辺の意味はどうもつかめないが、英語自体の表現もあいまいなのだ。ともかくも眼窩前頭皮質は、いくつかの人格が分かれることなく統合を果たすことを促進し、その力が弱まっている(血流量が低下している)ことがDIDの病理を生んでいるという風に理解できる。少なくともこんな仮説があることだけでも知ってよかった。

ということで、このForrest 先生の論文を探していると・・・・あれ!ダウンロード可能。ちょっと読んでみるか。