2014年6月18日水曜日

解離の治療論 (63)

 この論文を読んでみて、なるほど、というところと拍子抜けしたところがある。なるほどと思ったのは、過去のトラウマを思い出せない人格、たとえば大部分の主人格は、脳が自分の過去を実際に記憶していないがごとく扱っているということ。演技ではないというわけだ。しかし同時に痛みコントロールを用いている。POIGの過活動がそうだ。つまり主人格は、過去のトラウマを思い起こさせるような場合には自分に麻酔薬を投与し、それにより(???)過去のトラウマ記憶をブロックしているということになるのだろう。他方では交代人格は過去のトラウマを背負っているわけだが、その意味では交代人格の方が「正常」と言える状態ともいえる。昔自分に起きたことに対して、正常な脳の反応を見せているからだ。
ちなみにこのPO,IGって、結局「抑圧」の機制にも多少なりともかかわっていることになりはしないか?あることを忘れたり、意識の外に追いやるために活動する部位。しかしそれを考えると解離と抑圧の差がさらにあいまいになるな。
でも拍子抜けしたこともある。人格を二つに分けてPETで記録を取ることはできても、人格B,C,Dで別々のパターンを示す、というようなことは絵空事なわけだ。私も以前はそんなことを考えていた。人格Aが出ているときは、脳のある個所、Bが出ているときは別の個所が活動していることが、脳画像によりわかるのではないか、ということを。しかし確かにそれぞれの人格で一見別々のネットワークが活性化されているとしても、それらは高度に「入り組んで」いて、とても画像ではわからないはずなのだ。でも将来CTMRIがものすごく高画質になるということはあるかしら。でもそうなるとMIRの場合ものすごい磁力が必要になり、開発費もとんでもないことになって…。やはり無理なのだ。