2014年3月31日月曜日

続・解離の治療論(17)

トラウマを背負った子供人格について

これまでの記述してきた子供人格は、遊びが好きで甘える仕草を見せるという、比較的よく出会う人格を想定して論じられた。その場合には「遊び疲れるまで付き合う」という方針がおおむね妥当であろう。彼らは比較的容易にその介入に満足し、やがてあまり出現しなくなる傾向にある。しかし深い外傷を背負った子供人格の場合にはかなり事情が異なるようである。その外傷の深刻さに応じて、それは繰り返しよみがえり、その子供人格の現れ方はフラッシュバックとしての様相を呈し、繰り返し繰り返し、同様の体験を再現する。そこでの子供人格はいわばパニック状態にあり、問いかけに答えることも少なく、また通常のプレイセラピーに応じることも難しい。そしてその分だけ成長したり、遊び疲れて寝てしまったりというプロセスをたどることは難しいようである。

先に簡単に紹介した50代女性ケースである。幼児期にトラウマを体験したことがあり、毎日トラウマの生じた時刻に、決まって泣き叫ぶ子供の人格を内部に感じる。毎日そのたびにパートナーとの電話連絡が必要となる。カウンセリングを受けて数年になるが、依然として子供人格の様子に大きな変化はない。ちなみにこのケースで「遊びに出てくる」タイプの子供人格の様子は観察されていない。