2013年10月18日金曜日

欧米の解離治療は進んでいるのか?(9)

まあともかくこのガイドラインを読み進めてみよう。
第1段階 安全性の確保、安定化、症状の軽減
この第1段階の目標としては、表題に掲げられたとおりだ。書かれていることは大抵の精神療法の初期のプロセスに関するものと変わりない。患者によってはこの第1段階で治療の大部分を占めてしまうことがある、と書かれている。そして「彼女たちが広範にわたる情緒的に深いレベルでのトラウマのヒストリーを探ることはなく、人格たちの融合に至ることもない」と言う。私はこの段階での治療をもっぱらやっているのみなのかと一瞬不安にもなる。
 さてそれ以外にこの第一段階について書かれたことについては、特に目新しいものはないし、常識的な内容である。交代人格には、基本的には登場した際に会うという形を取るべきであるとか、特定の人格に「奥に引っ込んでください」などと言わない、とか。あまり前だよね。それとか人格を時には呼び出すことも必要であるとか。それもそうだ。
 さて安全性の問題についてはいくつかの項目が挙げられているぞ。1.治療の成功には安全性の確保が必要であるという教育を行う。2.安全ではない、リスキーな行動のアセスメント 3.安全であるためのポジティブで建設的な行動のレパートリーの作成。4.危険な行為を行う交代人格の同定。5.患者を安全に保つために交代人格の間で合意形成をする。6.グラウンディングテクニック、自己催眠、薬物の使用など。7.薬物依存や食行動障害など、他の専門家の助けを必要とする問題のマネージメント。8.患者が子供に暴力的であったりする際の専門機関の導入。9.患者の自己防衛を動員することを助ける。

でも何か書いているうちに少し感動してきた。アメリカ人はこうしてやたらとシステム化して考えるが、我々日本人(というか私)はこれをちゃんとやろうとしない。それでいて自分で何かを作り出そうと考えたりする。こうやってきちんとマニュアル化しているものを取り入れるのも悪くはないかもしれない。このいくつかの項目のうち5は、とびぬけて高いハードルという気がする。というよりはこれを行うことが第1段階に入っていることに多少なりとも違和感を覚える。そもそもこれを行うためにはその人に備わっているあらゆる人格とコンタクトを取り、話し合う必要が生じる。しかし多くの「黒幕」的な人格は話をしてさえくれないことが多いのだ。