2013年10月13日日曜日

欧米の解離治療は進んでいるのか?(4)

昨日は京都の精神病理・精神療法学会。午前中に出番が終わり、京都は暑いなあ、と思いながら東京に戻ると、もっと暑かった!学会では幸い[アウェイ感」は特になく、楽しく議論をすることが出来た。

依然として脱線気味である。ISSTDのガイドラインの中身を見ているうちに、「DIDは人格の統合が行われる前にトラウマが起きたために、ちゃんと統合されなかった」という論旨に対する異議を唱えている最中である。
 さて子供が人格Bを精緻化する際のもう一つの重要な要素であるファンタジー傾向。これについての論文では言及してないが、これも考えれば同一化と非常に近い関係にあることがわかる。少年が忍者タートルと同一化してかのように振舞う為には、その少年の側のより高い想像力や知性が必要となる(うそ、うそ)。何しろコピー元の情報は限られているのだから。
ということで再びガイドラインに戻ろう。192ページのepidemiology (疫学) についての項目。精神科の患者のうち1~5%がDIDの診断基準を満たすという。ということは実際の人口ではこれよりかなり少ないということになるか。ここら辺に異論はない。そしてそれらの患者の多くがDIDとは診断されていず、その原因としては、臨床家の教育が行き届いていないから、とある。大部分の臨床家は、DIDが稀で、派手でドラマティックな臨床症状を呈すると教育されているという。しかし実際のDIDの患者は、明らかに異なる人格状態を示す代わりに、解離とPTSD症状の混合という形を取り、それらは見かけ上はトラウマに関連しない症状、たとえば抑うつやパニックや物質乱用や身体症状や食行動症状などにはまり込んでいるという。そして診断はこれらのより見かけ上の診断を付けられ、それらの診断に基づいた治療の予後はよくないという。ここら辺は事情は日本とほとんど変らないと言うことか・・・。
 さてNOS(他に分類できないもの)についてはどうか。臨床現場で出会う解離性の患者の多くはNOSの診断を受ける。ここには実際はDIDだが診断が下っていない場合と、DIDに十分になりきっていないタイプとが属するという。後者に関しては、複合的な解離症状を伴っていて、内的な断片化がある程度生じていたり、頻繁でない健忘が生じているものの、もうちょっとでDIDにいたっていないという場合であるという。ここら辺も特に異論はない。ただし私の感想としては、DIDの人は、人格が精緻化されるという方向にまで普通は行き着いているようである。人格の分節化のプロセスは、いったん始まったらあとは半ば自動的に起きるプロセスといえるのではないか?

さて施すべき心理テストはたくさん書いてあるぞ。以下頭文字のみ。SCID-D, DDIS, MID, DES, DIS-Q, SDQ-20.・・・本当に彼らはたくさん作るな。私はちなみにほとんど使ったことがない。