2013年10月20日日曜日

欧米の解離治療は進んでいるのか?(11)

今日はあまりにひどい天気。せっかくの日曜日が台無しだが、月に一度の研究会にはみなさんがいらした。有意義な時間を過ごせたと思う。


ガイドラインの「治療の方式 treatment modalities」 という部分に移る。
外来治療の枠組みについて
治療の第一の選択は外来での個人精神療法である。頻度や期間は様々なファクターにより変わってくる。しかし通常はC-PTSDなどと同様、治療は長期に、年単位にわたって続くと考えるべきである、とする。頻度については少なくとも週に一度、多くのエキスパートは週二度を勧めるという。ただし高機能の患者については、週一度でいいであろう、とも書いてある。それ以上に頻繁になる場合(例えば週に34回など)は、期間を限定することで、患者の依存や退行を予防する、とある。またセッションの長さについては、4550分が基本であるが、時には7590分を必要とする治療者もある、と書いてある。セッションの終わり方については特に書いてある。患者が混乱したり解離した状態でセッションを終えることを避けるために、いかにグラウンディング(地に足をつけること。氷を握ってもらう、などの試み)を行うかを患者と共に考えておく人が必要である、と書いてある。
ちょっとここで口をはさみたくなる。私はアメリカに長年いたが、患者たちの多くがいかに金銭的に困っているかをよくわかっているつもりである。彼らの財布には23ドルしか入っていないというのはざらなのである。トラウマを負った人の多くは仕事がなく、健康保険にも入っていない。それでどうやって週二回、数年間の治療費が賄えるというのだろうか?それにたとえ保険に入っていても、精神療法に通えるのは一年に15回まで、などと制限が加えられてしまう。低所得者は高い保険の掛け金が払えないので、メディケイドという国の提供する保険に入るのだが、それで提供できる精神療法は質量とともに非常に限られたものになるのだ。私はメディケア、メディケイドの人たちばかりを対象にした地域の精神衛生センターで仕事をしていたが、そこでの経験からすると、このガイドラインに書かれているような治療など、いったい何人に一人が受けることが出来るのか、と思ってしまう・・・・・。

まあそれはともかく・・・・。外来の治療としては、特にやり方を定めるというよりは、折衷的eclectic であると言う言い方をしている。目標が達成できれば、認知療法的でも、力動的でもかまわないと言うことなのであろう。催眠についても用いることは有効であるが、主として沈静化、宥めること、自我の強化、と言った目的で行なわれると書かれている。EMDRなども必要に応じて用いればいい、と。