2013年10月19日土曜日

欧米の解離治療は進んでいるのか?(10)

2段階 直面化、徹底操作、トラウマ記憶の取り入れ
いよいよ第2段階だが、この非常に精神分析的な響きに驚く。直面化も徹底操作も精神分析の概念ではないか!!しかも最初に書かれているのが、この段階におけるabreaction除反応(解除反応ともいう)の重要性であるという。これも言うまでもなく精神分析起源だ。そして書いてある。「除反応は十分計画され、その方法も注意深く選択されなくてはならない。」「たとえば暴露exposureによるものか、計画された除反応planned abreactionか。」しかしこれに関しては、特にDIDの患者に限ることではないという気がする。PTSDでもC-PTSD(複合型PTSD)でも同じである。しかしここでこの第2段階で特にDIDに当てはまることとして書いていあることがある。トラウマの記憶を担っている人格との作業だ。そうすることで「その人の人格を超えた情緒の体験の広がりが増す」からだという。このトラウマの作業により、トラウマ記憶はナラティブメモリーへと変わっていくというのだ。

さて次に出てくるのが、融合儀式fusion ritual である。うーん不勉強にして聞いたことがなかったなあ。トラウマ記憶のナラティブ化が進むにつれて、人格たちは別れている理由がなくなってくるという。この儀式は催眠やイメージングにより行う。ただしまだ融合する用意が出来ていない交代人格にそれを強いては決していけない、とも書いてある。
 さて第3段階は、特別章立てをする必要もないほどに簡略化されている。そこで行われるのは第2段階の発展的な継続やコーチングであり、実質的にはトラウマを抱えた非解離性の患者の治療と変わりないという。
 ここまで読んでずいぶんそこに書かれることに目新しさを覚えるとともに違和感も覚える。人格が寝るという現象、自然治癒的なプロセス、年齢的な症状の推移などが書かれていない。あるいは積極的な融合儀式について書かれている。この歳(57歳半)まだまだ学ぶことが多いなんて、道は遠いなあ。