2013年9月18日水曜日

トラウマ記憶の科学(15)

本書においては、精神療法のさまざまな形態において、コヒアレント・セラピーの中のTRP(治療的再固定化のプロセスtherapeutic reconsolidation process)に相当するプロセスが事実上組み込まれているという主張が行なわれる。つまり記憶の再固定化がそこに生じており、それが有効に生じる為の記憶の不安定化とミスマッチという現象が起きていると言うわけである。これはある意味では非常に野心的でかつ重要な主張といえるだろう。本書はそのような治療の例として、AEDP(Aaccelerated Experiential Dynamic Psychotherapy), EFT (Emotion-Focused Therapy), EMDR, IPNB (interpersonal neurobiology) などである。
 ということで少しずつ例を読んでみた。でもどうもちょっと違う気がする。たとえばEMDRの例をとると、トラウマ性のある記憶をイメージしてもらいEMDRを施した後、巧みにミスマッチのある記憶や思考の探索に移り、こんどはそれをイメージしてもらってEMDRを行うという形をとる。やはりミスマッチとなる思考やイメージを探し出すというプロセスはこのTRPに独特の部分という気がする。それをEMDRという形をとるという感じだ。EMDRの中にTRPがすでにビルトインされている、というのとは逆という気がする。つまりTRPを用いるコヒアレントセラピーは、独自性があるのではないか、という考えに至ってしまう。私が間違っているのか?
 本書は終わりに近づいているが、そこで例に上がっているものをこれからピックアップしていこう。
その前に、繰り返しになるが、過去の思いを語ってもらうことそのものが実はTRPになりうるのだ、という点は幾度も強調しておきたい。自分の思い出について語った場合、それが自分の外に出てしまい、聞いてもらった人の口から再び語ってもらうことで記憶自体が変わってしまったという気がすることがある。もちろんそうならない場合もあるし、誰に聞いてもらうかが決定的だったりするのであるが、それがTRPが成立する条件がそれだけ微妙で偶発的である可能性があるということだ。私がいろいろなところで書いている原則、すなわち治療中に語ってもらったトラウマが、再外傷体験になるか除反応になるかは、「後になってみなければわからない」とはまさにそのことなのである。