2013年8月26日月曜日

解離の初回面接(6)

生育歴と社会生活歴

解離性障害の多くに過去のトラウマやストレスの既往が見られる以上、その聴取も重要となる。特にDIDのように解離症状がきわめて精緻化されている場合、その始まりが幼少時にあることは大多数のケースについて言えることである。ただしトラウマの問題は非常にセンシティブな問題であるため、その聞き取りの仕方には言うまでもなく慎重さを要する。特にDIDにおいて幼少時の性的トラウマをはじめから想定し、いわば虐待者の犯人探しのような姿勢を持つことは勧められない。またDIDにおいて面接場面に登場している人格がトラウマを想起できない場合もあり、実際に家族の面接からも幼少時の明白なトラウマを存在を聞き出せないこともまれではないことを念頭に置くべきであろう。さらには幼児期に何が甚大なインパクトを持ったストレスとして体験されるかは子供により非常に大きく異なる。繰り返される深刻な夫婦喧嘩や極度に厳しいしつけが事実上のトラウマとして働くこともまれではない。
 成育歴の聴取の際にはそのほかのトラウマやストレスに関係した事柄、例えば転居、友人との関係、家族内の葛藤、疾病や外傷の体験等も重要となる。またその当時からIC(想像上の友人)が存在した可能性についても聞いておきたい。また筆者が最近特に気になるのは、幼少時ないし思春期の海外での体験である。ホームステイ先でのホストファミリーからの性的外傷等のケースが非常に多く、またそれを本人が一人で胸にしまっていたという話を頻繁に聞くのである。幼少時は安全な環境(例えば日本、ただしもちろんそれでも万全とはいえないが)で過ごすことが小児が外傷から身を守る上で極めて大切なことである。論文から逸れたが。