2013年8月25日日曜日

解離の初回面接(5)

だめだ。もうゼーンゼン論文口調。

症状から解離性障害が明らかな場合、その他の解離症状についてもスクリーニング的に尋ねるべきであろう。特に没頭、熱中傾向、離人傾向、転換性の身体症状などである。具体的には「物事に熱中しすぎて、周りが見えなくなってしまうようなことはありますか?」「時々自分の体や世界が遠くに感じられたり、自分が自分でないように感じることはありますか?」「体の感覚が急に麻痺したり、手足が動かなくなったりということはありますか?」などの質問がそれに相当する。さらには自分を外から見ているような体験、鏡で自分を見ても自分ではない気がするという体験、自分が所有している覚えのないものを持っていることはないか、などの質問も私はすることが多い。これらはDES(解離体験尺度)に出てくる質問であるが、それぞれが解離のいろいろな側面を捉えたものである。逆にこれらの質問に対して肯定的な答えをする人ほど、DESの点数が高くなることになる。(勿論我が同僚柴山先生の影響も受けている。)
 自傷行為については、それを解離の症状とは必ずしも言えないが、解離性障害の方がしばしば示す傾向である為に質問項目に加えておきたい。「カッティング」(リストカット等)による自傷行為は、それにより解離状態に入ることを目的としたものと、解離症状、特に離人間から抜け出す目的で行なうものとに分かれるという私の印象は変らない。またいずれの目的にせよ、そこに痛覚の鈍磨は必ず生じており、その意味ではカッティングを行なう方は知覚脱失という意味での転換症状を部分的な解離を体験していることになり、それだけ他の解離体験も有している可能性が高くなる。とはいえ勿論、カッティングをする人が皆解離性障害というわけではない。

ちなみにカッティングはそのほかの解離症状や過去のトラウマ体験に少なからず関係していることは確かであろうが、無論それらとは直接関係していないカッティングも生じうる。そのことはその他のimpulsive-compulsive behaviors (衝動的強迫的行動)についてもいえることである。

患者さんが知覚の以上、特に幻聴や幻視についての体験があるかについても重要な情報となる。その際幻聴の下である人をある程度同定できることはそれが解離性のものであることを知る上で重要な手がかりとなる。それが自分の中の別人格であり、名前も明らかになる場合には、それはおそらく高い確率で解離性のものといえるであろう。また幻視は統合失調症ではあまり見られないものであるが、解離性の厳格としてはしばしば報告される。それがICのものである場合、その姿は見える場合も見えない場合もある。またそれが実在するぬいぐるみや人形などの姿を借りるということもしばしば報告される。