2013年8月22日木曜日

解離の初回面接(2)

さて、解離性障害の初回面接も、通常の初回面接と大きくかわることはない。アウトラインとして「鑑別診断の含めた質問の留意点」記憶の欠損/自傷行為/幼児期のストレスないしはトラウマ/熱中、没頭傾向/離人傾向/性格傾向/以前の治療者との関係について/紹介状について/併存症の確認/医師の側の理解の説明/今後の治療方針について、などなど。
とリストアップした上で書き出そうとしたが、その前に・・・・・。
患者さんに「大変でしたね」と伝える

初回面接に際して特に解離性障害の場合に言えることは、おそらく患者さんは非常に警戒し、こちらの解離についての理解の程度を伺っているということである。非常に多くの場合、患者さんは別の精神科医と出会い、場合解離性障害とは異なる診断を受けているはずだ。患者さんが現在服用している、あるいは「お薬手帳」に貼られているシールにある薬のリストがそれをある程度示唆している。しばしば抗精神病薬(リスパダール、ジプレキサなど)が出されているはずである。そしてそれはかつて解離症状を「精神病症状」として、つまり統合失調症の症状として捉えた医師が、それを治療するために処方した可能性がある。それらの薬を処方した精神科医を離れてたずねてきた患者さんの場合、さまざまな誤診を受けてきた可能性があり、それに対する「大変でしたね」という声かけは必要かもしれない。
もちろんそのような経験がない患者さんもいる。その場合に「大変でしたね」のねぎらい(この言葉が私は嫌いである)の言葉は意味がないかもしれない。ただここにたどり着くまでにすでにいろいろ誤解を受けている可能性がある、ということを面接者は念頭に置かなくてはならないということである。
 患者さんが誤解を受けてきた可能性があるもうひとつの理由は、解離性(転換性)障害の性質そのものにある。異なる人格が存在すること、一時的に記憶を失い、その間別の自分が人と出会っていること、体の諸機能が突然失われて、また回復することなどは、いずれもそれを本人が意図的にコントロールしているという誤解を容易に受ける。そして患者さんはそのような体験を何度も繰り返している。そのプロセスで症状を隠すようになり、当然のことながらこれまでに出会った治療者に対してもそれらのいくつもを隠している可能性がある。それが更なる誤診を招くのだ。