2013年8月21日水曜日

解離の初回面接(1)


再び「大人の事情」がやってきた。「解離性障害の初回面接」について、季節が変わるころまでに考えておかないと、いろいろな人に迷惑がかかるという事情だ。しかしこのテーマは渡りに船である。このブログで下書き(ナンの話だ)が出来そうだ。

とはいえ、「解離の初回面接」というテーマは容易ではない。解離の初回面接は「解離性障害(の疑い)」として紹介されていらした場合と、そうでない場合、例えば統合失調症やボーダーラインの疑いでいらした場合とでは多少なりとも異なる。また稀にではあるが、「解離性障害の疑い」で見えた方が、実は少なくとも典型的なそれではないと判断される場合もあるのだ。
 そこで本稿は「解離性障害の可能性があると思われる患者さんについて、鑑別診断を下すという目的も含めて初回の面接を行う」くらいの設定を考えて論じよう。(まずい。もう「論文口調」になってしまっている!) 

解離の方にも、それ以外の方にも、私は最初に「主訴」にあたる部分を聞くことから始める。もちろんご本人の年齢、身分(学生か、お勤め、など)居住状況(ひとり暮らしか、既婚か、実家の家族と一緒か、など)、などの簡単なプロフィールをまず聞くことが最初かもしれないが、その次に聞くことは、この「主訴」である。要は現在一番困っていること。もちろんこんなこともある。「お母さんから言われてきました。」「私はとくに困っていることはありません。」その場合には「ご本人の訴えは特になし」ということになるが、「お母さんはあなたのどのようなことをご心配なさっていると思うのですか?」はさまざまな意味で妥当な質問である。
私の経験からは、解離の方の場合には「物事を覚えていないことが多いんです」「物忘れがひどいんです。」「記憶がトンじゃうんです」などの記憶に関することが多いようである。それに比べて「声が聞こえてくるんです」「頭の中にいろいろな人のイメージが浮かびます」などの主訴は聞くことは少ない。前者は実際の生活で困ることであるのに対し、後者はご本人はかなり昔からそれを体験しているために、それ自身を不自然と思っていないことが多いからであろうと思う。