2013年6月24日月曜日

DSM-5における解離性障害 改訂版 (3)

最近よく聞く「ツートップ」という表現。上位の二つという意味だろうが、変な英語(的表現)だ。敢えて英語で表現すると "top two" か? 

2) 解離性遁走の削除

解離性遁走はDSM-IVまでは独立した障害として掲げられていたが、DSM-5からは心因性健忘のひとつのサブタイプとして分類されることになった。またその遁走の表現としては、それまでの突然の予期しない、自宅ないし職場からの旅立ちsudden, unexpected travel away という表現から、「一見目的を持った旅立ちやあてのない放浪 apparently purposeful travel or bewildered wondering」という、より正確な表現にかわっている。またこれがサブタイプにいわば「格下げ」された理由としては、遁走の主症状が目的もなく旅をすることよりはむしろ健忘そのものであるということ、新しいアイデンティティを獲得すること、混乱したままでの遁走などは常に存在するとは限らないこと(Spiegel, Dissociative Disorders in DSM-5 Annual Review of Clinical Psychology, 2013, 299-326 、そしてDSM-5のテキスト本文によればこの解離性遁走そのものが、DID以外にはまれであることなどが挙げられている。ちなみに私の経験では、心因性遁走は、男性のクライエントに特に多く見られ、その一部がDIDと重複しているという印象を受ける。言うならば解離性遁走は男性に現れやすいDIDの表現形態ではないかと思うほどである。そのためにこの「格下げ」については多少納得がいかないということを付け加えておきたい。