2012年8月28日火曜日

報酬系の続き (11)


快感の条件2  ネットワーク間の連結が報酬系を刺激する
( ちなみにこの内容は2年前のブログと重複している。)

 私たちは、わかった!という体験を大概は心地よく感じる。そしてわかる、という体験とは、ある思考や感覚記憶ともう一つの思考や感覚記憶がつながった状態なのだ。映画や推理小説でも、話が展開していくうちに、前に出てきた伏線となるシーンが思い出され、「ああ、あそこがこう繋がっているんだ。」と感じることがある。たいがいはこれは快感である。このことは、「わかりかけてわからない」という体験に対して私たちが持つ不快感や不全感が間接的に示していることだ。私たちはみな「わかりたい病」にかかっていると言えるが、実はわかる、ということは生命の維持にとって大切なことだ。
では「繋がる」という体験とは、脳科学的にはどういうことか? それはわかりやすく言えば、脳波の活動が「同期化」することである。心理学の実験で、二つの異なる棒A,Bをスクリーン上で動かすと、視覚野で、ABに相当する別々の部分が興奮する。そしてそれらの相は、バラバラなはずだ。何しろ別々の体験だから。ところが二つの棒は実は連動していて、その細い連結部分Cが覆いで隠されていたために、それらは別々のものとして認識されていたとしよう。そこでその覆いを取り去ると、被検者は、A,Bは一つの全体の別々の部分であるとみなすようになる。するとA,Bに相当する視覚野の二つの部分は、相変わらず興奮し、その細い連動部分Cに相当する部分も興奮を見せるのだが、以前と違うところはA,Bに相当する部分は同期化している。つまりサインカーブの相が一致していることになる。相が一致している体験は、一つの繋がった体験なのだ。
生物の脳はおそらくこのとき大部分は快感を覚える。それは彼らの自己保存本能に合致するからだ。全体をわかること、一部の動きから全体を知ること、それは敵から身を守るために必要なことだからだ。サバンナの草むらで、ライオンが身体の大部分を隠している。頭と尾の一部だけが別々に見えているとしよう。それを見ただけでライオンの全体を把握する能力のあるシマウマは生存の可能性が高くなるだろう。だからその種の能力は、快感原則的に保証されている必要がある。人間が物事を「わかる」能力も同様だ。では一番大きな「つながり」を脳が実現したらどうだろうか? ABCDEFも・・・・・みながひとつであるという体験。それは一種の悟りの境地に近く、宇宙といったいとなった状態といっていい。それは狂気のきびすを接していて、同時に・・・・カイカンでもあ

る。それが特殊な薬物で得られるとしたら、ちょっと手放せなくなるだろう。