2012年7月21日土曜日

続・脳科学と心の臨床 (55)


心理士への教訓)

DBSについて知った心理士はどのように面接態度が変わるのか?ウーン、あまり変わらないのかもしれない。しかし少なくとも心因論的な姿勢は少し弱まるのかもしれない。
今朝もある患者さんがやってきてこんな話をした。「先週から急にズドーンと落ちたんです。この三日間は起き上がれないくらいです。」彼女は30代後半の独身女性で飲食店勤務。このところは抗うつ剤の影響もあり、少しハイなくらいに働いていた方だ。落ち込みについて思い当たるきっかけを聞いても本人もわからない。お店でトラブルに陥ったこともなく、家で同居している母親とけんかをしたわけでもない。このところ順調だなと思っていた矢先である。
別のケースはこんなことを行った。「気持ちのスイッチは突然入るんです。自動販売機でジュースを買って、それが下の受け口に落ちてきたその瞬間に、気持ちがすっと軽くなったんです。」
このようなケースに色々心因を問うことの意味はあまりない。きっと脳の中にいくつもあるであろううつのスイッチが押されてしまったのだ。そしてそのスイッチが脳のどこにあり、どうしてスイッチオンになったかはわからない。それはブロードマン25野というところ、内側前頭前野という部分であるかもしれないし、そうでないかもしれない。彼女に、ではDBSを受けてもらうのか?でもそれはやはり大変な手術なのだ。自分の家族が鬱になってDBSを受けるとしたら絶対躊躇する。(私自身だったらやってみたいが)。だって脳に電極を植えられ、皮膚を伝ったコイルで体に電池が埋め込まれ・・・・。やはりつらい。しかし、である。慢性うつで数年間も社会生活ができない人がいる。そういう人にとっては皮下の電池がなんだ、とも考えられる。
実は「薬を飲む」ということに関しても、レベルは全然低いにしても同じ侵襲性、そこに伴う「何もそこまでやるなんて…」「体にそんな異物を入れて…」感がある。私は家族が鬱になっても薬を飲んでもらうことに多少躊躇する。(私自身だったら全然平気だが。)