2012年1月23日月曜日

心得12.「事例」

事例)
しかし以上の話は、実際の臨床家にとってはわかりづらい可能性がある。ある心理士(Cさん)は次のように言う。


「でも私の患者さんの中にはセッションを直前にキャンセルしたり、面接時間を30分も過ぎて電話があり『昨日は遅くまでお酒を飲む機会があり、二日酔いで頭が痛いのでいけません。』とおっしゃる方がいます。彼はしばしばその様にして時間に遅れたり、直前でのキャンセルをしたりして、その度に時間を開けて待っている私はがっかりしたり、イライラしたりします。私は精神科のクリニックでの患者さんと会っていて、いわゆる「通院精神療法」なので、さほど費用がかかりません。するとむしろ治療を軽視したりする傾向が生じるのでしょうか? でも最初はそういうことはありませんでした。会い始めて一年ぐらいしてから、徐々に遅れたりキャンセルしたり、が目立ってきたんです。もちろん私は彼が来る時はいつも笑顔で迎えていますが、最近ハラが立ってきます。まさに「アマエルナ!」と言いたくなるのです。」


もちろんCさんの気持ちはわかる。しかし先ほども述べたように、甘えとは結局は「依存欲求を持つ人が、それを他人が受け入れてくれるかについて計算違いをしているという事実以上の何物も意味していない」のである。つまりはCさんがそれでも喜んで待ち続けてくれている、と思い込んでいる(思い込ませている)のが、この患者の持つ誤認なのであり、それを患者に伝えることが前提になる。セッションに遅れても定刻に終わる(それが難しいなら、次のセッションの時間にしっかり別の患者の予定とか、さもなければ仮想上の会議をを入れる)、キャンセルが多いことを根拠に、今後の面接の頻度を減らす、などの工夫が必要である。