2011年7月13日水曜日

冷房がなかった頃

暑い日が続く。今日あった70歳の患者さんがアパートの14階に住んでいて、冷房を付けていないという話を聞いた。今の時代にはこんな話は驚きだが、人類の歴史の99.9パーセントは冷房などない時代だった。一昔前までは、冷房が付いている、というのは贅沢なことだったのだ。今は熱中症などの危険が言われて、冷房を付けるというのは人は何ら抵抗を感じないらしい。
私は大学の教養学部時代の二年間、しっかり冷房なしの6畳間(民家の二階の下宿)で過ごした。窓用の冷房など、付けようとしたら窓枠が外れるくらい華奢な作りだった。階段を人が上がってくるだけで、家全体が揺れたものである。驚くべきことに、その部屋には扇風機もなかった。私はその頃、扇風機は暑い空気を掻きまわすだけで全然効果がない、と思っていた。だからあえて扇風機も買わなかったのである。夕方帰ってくると、閉め切った部屋には暑い空気が閉じ込められている。良くあそこに入り、朝まで過ごしたものだと思う。都会の下宿などで窓を開け放つわけに行かず、朝起きる頃などはじっとり汗をかいて、まさに暑さで起きるという感じ。夏休み中などは、冷房を求めて外は外出というのが定番だった。近くの杉並区の宮前図書館などよく入りびたったものだ。
夏の冷房など、ないと分かればあきらめがつくものである。今だって冷房のない外国に旅行する時などはそれなりに我慢をする。ところが日頃散々お世話になっている冷房が壊れた時などはこれほど苦痛なことはない。今のマンションも、実はこの一週間ほどはその状態だった。修理の人が来てくれるまであと何日と指折り数えたものだ。(なんと一週間先にしか予約を入れてもらえなかった。)ひ弱になったものである。