2011年6月11日土曜日

アートセラピーの是非

昨日ネットでこんなニュースを見つけた。

 「アートセラピー」かえって心の傷深くなる場合も
心のケアのため、被災地の子どもに絵を描いてもらう「アートセラピー」について、日本心理臨床学会が9日、注意を呼びかける指針をまとめた。心の不安を絵で表現することは、必ずしも心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防にはつながらず、かえって傷を深くする場合もあるという。
 被災地では、自由に絵を描いてもらうことが心の回復につながると、個人やNPO団体などが次々に入り、活動している。大手企業が主催する例もある。
 臨床心理士ら約2万3千人が所属する同学会が9日にまとめた「『心のケア』による二次被害防止ガイドライン」では「絵を描くことは、子ども自身が気づいていなかった怒りや悲しみが吹き出ることがある」と指摘。特に水彩絵の具のように、色が混ざってイメージしない色が出る画材を使う際には、意図せず、強い怒りや不安が出てしまう心配があるため、注意が必要とした。

見逃せない記事である。わが国では最近某団体が子どもが津波の体験を表した絵の展示会を行ったが、トラウマ関係者からそれに対する懸念があがった。同様の懸念は諸外国の研究でも明らかになっているというが、これも先日論じた子どもの「津波遊び」と似ていると考えていいであろう。描画は一部(大部分?)の子どもには癒しになり、一部の子には逆の効果がある。あるいは同じ子が描くとしても、どういう状況で何を描くか、誰に描くように言われたか、などにより癒しになったり逆になったりする。治療者や保護者はそれぞれの子どもの様子を見てきめ細かな判断をするしかないという結論に至る。臨床的なかかわりが難しいのもこの点に尽きるだろう。