2011年3月10日木曜日

社交恐怖の精神分析的なアプローチ(6) 架空の症例呈示

症例Aさん(架空)
手が震えるという訴えの40代前半の女性Aさん。夫を数年前に病気で亡くしてからは、パートで給食関係の仕事をしつつ、中学生の一人息子を育てながら生活している。それまで2年間ある心理士からカウンセリングを受けていたが、あまり効果を感じられずに、別の心理士B先生が担当となった。それまでの2年間のカウンセリングではAさんの極端に低い自己価値観が主たるテーマとして扱われていた。担当心理士は精神分析的なオリエンテーションを持っていたが、深層の解釈に特にこだわることなく、むしろ淡々とAさんの日ごろの悩みを聞いていくことが多かったという。Aさんはまた母親との葛藤に満ちた関係についても話した。Aさんは幼い頃から母親から否定され、無視されることが多く、それが自分自身の引っ込み思案な性格や自信のなさに関係していると感じていた。B先生との治療によりそれによりAさんの自己理解はたしかに深まり、自分が母親に抱いていた強いネガティブな感情について洞察を得ることが出来た。こうしてAさんは治療により精神的に支えられることも多く、毎週のセッションには熱心に通ってきてはいたが、それでも症状は依然として続いていた。Aさんは同僚の前で手が震え、給食に用いる容器を落とすのではないかと心配になり、仕事に行きたくなくなるなどの問題は変わらなかったという。そこで転居を機に新しい治療者B先生にかわることになったのだ。
そこでB先生が行ったのは、CBT的な要素の導入であった。さてその手法とは?