2010年12月22日水曜日

解離に関する断章 その3  解離の概念の「作図線効果」、「地ならし効果」

昨日は大学院の学生たちに、チビを紹介した。チビはいきなりたくさんの人たちに囲まれて興奮し、そのあと呆然としていた。きっと解離状態だったのだろう。

引き続き解離の話
どの世界にも流行(はや)り廃(すた)れがある。精神医学の概念についても同様である。精神医療に従事して30年足らずの私は、身をもってそれを経験する機会に恵まれた。
その上で改めて問いたいのだが、新しい障害概念が特定の時代に専門家達の支持を集め、マスコミをにぎわし、また臨床にも貢献するのはなぜなのだろうか?例えば最近のアスペルガー談義である。臨床家の間でアスペルガー障害について話題にならない日はないのではないか? これまで少し変わっている、どこかおかしいが診断に困る、という人について考える際、「結局アスペルガーではなかったのか?」という考えが、日に何度か頭をよぎるという臨床かも少なくない。どうしてそのようなことが起きるのか?
私の考えでは、「それはその新しい概念が、すでに複数の異なる障害に少しずつ形を変えて顔をのぞかせていたからである」というのが私の考えである。
たとえば躁うつ病の患者さん、神経症の患者さん、あるいは一見何も問題のない若者が、衝動的に手首を切ったり、すぐ感情的になり他人とうまく関係を結ぶことができない人がいて、臨床家の頭を悩ませていたのですが、そこに境界性パーソナリティ障害(BPD)という考えが与えられたことで、それらの人に共通して存在していた精神障害が急速に注目を浴びるということが1970年代に生じたわけである。そしてBPDという概念がいったんできると、それが患者さんの持つ様々な問題をより見やすく表現することにつながったのである。

(長いので、以下略)